教員から薪専門店オープン、そしてキャンプ場運営へ
薪専門店「火の香」と、キャンプ場「ほの風フリーサイト」を営む工藤智也さん(58)。大館市田代地域の早口地区に生まれ育った工藤さんは、34年間勤めた中学校教諭を2022年に退職。同年10月に「火の香」を、翌2023年9月に「ほの風フリーサイト」をオープンしました。
「火の香の薪」で心地良い時間を手軽に
子どもの頃から薪ストーブに慣れ親しんできた工藤さん。薪が燃えるパチパチという音と香りに包まれながら炎を眺める時間の心地良さを、多くの人に気軽に味わってほしいという思いで、火の香を立ち上げました。
一年半以上かけてじっくりと乾燥させた火の香の薪は、火の持ちが良く、煙やススが少ないのが特徴。薪ストーブにもキャンプにも最適です。
現在は、大館市と北秋田市の販売所のほか、藤里町の「白神山地 森のえき」でも販売しています。
まだ気付いていない地域の良さをもっと知りたい
工藤さんのもうひとつの事業である「ほの風フリーサイト」。空いた時間に少しずつ耕作放棄地の整備をしていた工藤さんの姿を見た釣り人に、「ここをキャンプ場にした方がいい」と声をかけられたことがオープンのきっかけでした。
「自分がキャンプ場をやるなんて考えてもみなかった」と話す工藤さん。外から来た人の言葉で初めてこの土地に価値があることに気が付いたといい、「もっといろいろな人にこの場所を見てもらって、自分では気付かない良さを教えてもらいたい」と語ります。
2つのエリアがある「ほの風フリーサイト」
上流から川につながる水路が側を流れる「せせらぎエリア」では、周囲の人が立てる音も心地良い水音がかき消してくれるので、おのおの自分の時間にじっくり浸ることができます。
周辺にはヤマボウシやシナノグルミ、栗の木も。キャンプ利用のお客さんに人気が高いエリアです。
農道と農地に囲まれた「そよ風エリア」は、広々とした田園風景が魅力。視界を邪魔するものが少ないので、空の広さを存分に感じることができます。
ほの風フリーサイトの利用者は、近隣のりんご園でのりんご狩りや、わらび狩り等の体験オプションも利用可能。周辺住民に協力を得ながら、さまざまな楽しみ方を提供しています。
自分にできることで地域と関わりたい
教員時代は国語を担当しながら生徒会を受け持ち、ボランティア活動や地域活動に携わってきました。「教員をしている中で、自分にできることをして地域と関わりを持ちながら、充実した生活をしている人たちにたくさん出会った。自分もそういう生活をしていきたい」と工藤さんは話します。
「地域を盛り上げたいというよりは、お返しがしたいという気持ちが強い。自分が相手のために何ができるかを丁寧に考えて人と接していきたい」。長年の教員生活や、これまで出会った人や出来事、フリーサイトを訪れたお客さんとの会話。さまざまな出会いによって生まれた思いが、工藤さんの心に根付いています。
ライター:丹波桃子